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UPDATE : 2014.02.01

[インタビュー] Rumi Utsugi

  フランスの四強であるモンペリエでプレーする宇津木瑠美選手。日本から移籍して今年で4シーズン目。チームの信頼を勝ち取り、今は宇津木選手を中心としたチームが作られている。フランス語一つも知らずに日本を飛び出した彼女が、今はチームをリードする存在となった。その成長の秘訣と本音をのぞいてみた。    


 ――フランスに来てから3年以上経ちますが、今までを振り返ってどのように感じますか?

 interview_01フランスに来た当初はパニックでした(笑)。なんと言ってもサッカーの違いに唖然としていました。まさにカルチャーショック。みんなとサッカーをしている時は「何でこういうプレーをするの?」と、いつも不思議に思って、最初はなかなか受け入れることができなかったです。フランス語もしゃべれなかったので、自分の考えを伝えることもできなかったですしね。だから自然と自問自答するようになっていきました。それを繰り返しているうち、だんだんと自分の考えが窮屈だったんだなと気づかされました。その時にはもう1年くらいは経っていたかもしれないです。それでやっとフランスサッカーというものを理解するようになってきました。

 2-3年目辺りは、周りとの違いを受け入れることができるようになり、フランス語でコミュニケーションもできるようになったので、だいぶ楽になりましたよ。やっと意思疎通ができましたからね。自分が主張すれば相手も主張してきますから、どんどん深い話になって、そこから新しい考えを発見して自分の幅が広がっていきました。フランスでは言ったもん勝ちですからね(笑)。プロとしてのプライドもありますし、言い負ける訳にもいかないですから。それを逆に楽しいんでいました。

 そして今シーズン。正直言って、今までで一番充実しています。チームが技術重視に変化していて、どんどん良いサッカーに向かっています。練習も楽しいし、試合も楽しいです。もっと成長できる部分はあるけど、少しずつ結果が出るようになってきたと思います。ちょっとずつ私の考えも実践してくれるようになったのも良かったと思っていますし、感謝もしています。この流れに乗ってチーム全体がもっと強くなると信じています。



――今の目標を教えてください。

  私は敢えて目標は設定しません。もちろん、ビジョンが無いわけではありません。しっかり将来の展望を持っています。ただ、細かな目標を設定して自分を縛ってしまうのが嫌なのです。目標に向かう道以外の道が見えなくなる気がしちゃうんです。サッカーは、学校の勉強のように、正解があるとは限らないと思っています。もしかしたら、全ての道が正解かもしれないです。その反面、どこにも正解が無いかもしれません。つまり答えがあるかわからない状況で目標を作ると、視野を狭めて自分の可能性を制限してしまう気がするんです。私は自分の考え方を柔軟に持ちたいですし、いろんなことを吸収できる器の大きさを持ちたいと思っています。受け入れる幅を大きく持つことで、自分自身が成長できると思っています。



――ポジションへのこだわりは?

  当然あります。ボランチが私の全てです。ボランチにいてこそ、私はサッカーをうまく表現できて、チームを勝利に貢献できると思っています。試合中に誰がどこにいて、どこに向かうか、そして次にどんなプレーができるのかを常に計算して一つ一つプレーしています。ゲームを組み立てるのが好きなんです。しかし、まだ発展途上だと思っています。特に「個」へのこだわりが大きいフランスでプレーすると、チームを操るのは難しいです。けれども今は経験が長くなってきたこともあり、チームメイトとの信頼も築いたので、だんだんとやりやすくなってきました。まだまだチャレンジしたい部分はあるので、これからももっと成長するように頑張ります。




――フランスでプレーするメリットは何でしょうか?

  やっぱり「個」を学べるからですね。ドイツW杯の優勝で各国の代表は日本を分析してきていると思います。なぜ体格が劣る日本チームが優秀な成績を収められたのか。それは「組織力」に他ならないと思います。日本だからこそできる戦術であり、日本人らしさの表れだと思います。しかし今度は、海外の代表がこの組織力を取り入れだしたとしたら、どうなるでしょうか。日本よりも「個」に勝るチームに「組織力」がついたら、本当に強いチームが生まれると思います。日本が長年培った組織力がすぐに通用しなくなることは無いと思いますが、将来的には脅威になるかもしれないと思います。それに打ち勝つべく、私はここフランスで「個」を学んでいるのです。

 なぜフランスは「個」なのか。いろいろな背景があると思いますが、私はシンプルに人の違いがあると思います。モンペリエのチームだけに注目しても、国や人種がバラバラです。こんなにも異なる人々の集団の中ですと、自然と自分をアピールしたくなるものです。特に自己主張の強い地域ですから(笑)。誰一人と同じ事を考えない「個」の集まりが、一つのチームを成り立たせているのです。何でそんなことができるのか、3年所属した今でも不思議に思います。けど実際できているのです。こういう環境だからこそ奇抜なプレーが飛び出し、自分の視野を広げてくれます。移籍した当時はかなり戸惑いましたが、それが分かってきた今は、「個」の集まりが多様性となり、それがチームワークを生むってことを理解しました。だってお互いに無いものを補うのですからね。可能性は無限大、って肌で感じます。これが最大のメリットだと思います。

 

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――最後にメッセージをください。

  インタビューしていただきありがとうございました。私はサッカー一筋でやってきています。サッカーはボール一つで相手のゴールを狙うシンプルな競技です。だからこそいろんな可能性を秘めていて、世界中の人が魅力されるのだと思います。そしてフィールドからスタンドを見ると、観客一人一人がパワーを与えてくれると感じます。ありきたりの言葉でしか表現できませんが、これからも応援よろしくお願いします。

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